第34回サンパウロ・ビエンナーレ [group]

シッシロ・マタラッツォ・パヴィリオン、サンパウロ

2021年9月4日–12月5日

Chief curator: Jacopo Crivelli Visconti
Adjunct curator: Paulo Miyada
Guest curators: Carla Zaccagnini, Francesco Stocchi and Ruth Estévez
Guest curator for publications: Elvira Dyangani Ose, Director of The Showroom, London

Photo: Levi Fanan / Fundação Bienal de São Paulo

Photo: Levi Fanan / Fundação Bienal de São Paulo

ノート

電話でのあなたの声は非常に歪んでいて、非常に深く、その後私は大きな苦痛の状態に置かれました。声の物理的な接触は非常に強く、存在感があり、書かれた言葉の無益さを実感します。私の苦痛はあなたの反響であり、それをとても鋭く感じました。私は、私たちを再び立ち止まらせるために何ができるのか、もう本当にわからなくなりました。
──マルセル・デュシャンからマリア・マルティンスへの手紙、1951年5月13日

この、デュシャンらしからぬ情熱的な悲恋の手紙がマルティンスへ宛てて投函されたのは、1951年、第1回サンパウロ・ビエンナーレが開かれる直前のこと。マルティンスが夫とともにブラジルに戻ることで生まれた決定的な距離(ディスタンス)が 「insurmountable geographical obstacle」(Michael R. Taylor)となり、この秋、ふたりの関係は完全に破綻した。
デュシャンはかつて《大ガラス》において、男性(独身者たち)と女性(花嫁)とのあいだに横たわる距離を形にしていた。作品において、男性の欲望は目にみえない「飛沫」となってさまざまな機関をかいくぐり抜け、最終的に、女性の領域に9つの射撃痕を残す。それらは最終的に、女性が自発的に服を脱ぐための、間接的な、見えない力となるだろう。

* * *

このCovid-19の時代、見えないウイルスを避けるため、私たちには決定的な距離が生まれた。
インターネット回線を通じたコミュニケーションは“無益さを実感”させ、“存在感”のある“声の物理的な接触”を求めた。
声、そして欲望とともに発せられる飛沫はウイルスを運ぶメディウムとなり、人々の距離をますます遠ざける。
距離にかき消された“声は歪み”、“大きな苦痛の状態に置かれ”、どうしていいものかわからなくなる……「I Can’t Hear You」(大拙)。

声、飛沫、そして距離を、回転するスピーカー、ケーブル、ラジオによって作品化した。

第34回サンパウロ・ビエンナーレ [group]